中国のノンポリ層にとっての「ウイグル」
今回の記事は、中国の少数民族問題の背景や衝突の原因については述べません。中国の少数民族の諸問題について解説している新書や学術書は沢山あるので、解説はそちらのプロの方々にお任せします。
ここでは、あくまで中国国内の一般人民がウイグル問題についてどう見ているか?をコンテンツ分析などを通して、肌感を理解できるように努めます。
中国ではどういうウイグルコンテンツが消費されているか
春節恒例の中国の紅白、「春晩」を見ていました。そこでこんなショートコントが放送されました。
5分12秒あたりから漢民族のオジサンが現れ、ウイグル族のオジサンとコントを繰り広げます。この漢民族のオジサンは鉄道建設員で、このコントは昨今進んでいる経済ベルト建設と民族団結のプロパガンダです。
ここで昨年の春晩も見てみましょう。
ここでは、ウイグル、チベット、モンゴル、壮族の民族音楽のパフォーマンスのあと、漢語で「我らは中華民族の一員で、この祖国に抱かれて生きている」という趣旨を歌います。
このVTRは新疆の美人ダンサーが夢を追って都会に出てくるという内容です。
中央民族大学や各研究機関が一応、それぞれの少数民族文化の保護(はく製化?)をしています。日本の巷で言われる「民族浄化」というのは少し違います。
ただ、昨今の新疆情勢や少数民族問題が意識されていないか?というと違っていて、一応その問題点に迫ろうともしています。
新疆人(ここでは新疆少数民族の意味)には部屋を貸してくれないと差別を語る様子
https://www.youtube.com/watch?v=LzVM0Trybh4
このVTRではフェニックステレビの少数民族問題に関するシンポジウムのシーンから始まり、北京に住んでいるウイグル族の方々にインタビューをしながら、比較的マシだった時期の情勢から昨今の険悪な情勢について、そのグラデーションを浮き上がらせています。
また少し前の出来事ですが、イリハム・トフティーさんが当局に拘束されたときは漢民族のインテリ層も声を上げました。
厳しい現実
ウイグルを始めとした少数民族問題に様々なグラデーションがあるのは間違いないですが、厳しい現実も間違いありません。
下のツイートは、ウイグル族成年が「春晩のパフォーマンスに対して、アレは漢民族による偏見で、ウイグル族だからって毎日、羊を食べて踊っているわけじゃない」という呟きを研究者の方が拾ったモノです。
Uyghur netizens take offense to stereotypical representations of their culture on display at this year's Spring Festival Gala pic.twitter.com/X0rK1SxRaC
— Timothy Grose (@GroseTimothy) 2017年1月28日
ラビア・カーディルに寄せられたヘイト書き込み。
「ラビアはウリを売っていたのに何であんな短期間で富豪になれたんだ?しかも、彼女は政府の一人っ子政策を非難しているが、自分は子供は沢山いるなんておかしいだろ?彼女は口から出まかせをいって新疆で騒乱を起こし、一般市民も巻き込んだテロを起こしただろ?」
「共産党が何やったかは知らないが、ラビアは新疆に住んでいる一般の漢民族を殺しまくった事件の首謀者だろ?文句があるなら中南海に行けばいいだろ?この畜生め」
低評価の圧倒的な数。
ウイグルしかりチベットしかり、中国の少数民族情勢は加速度的に悪化しています。様々な要素も重なりその解決は一筋縄ではいきません。変に地雷を踏むと、自分が当局に拘束されたりするだけでなく支援している少数民族の方々にも迷惑が掛かってしまいます。地味な作業ではありますがこの問題に対して興味関心ある人は、書を漁り現地に足を運び、言葉を身に着け、情勢の濃淡やグラデーションを読解するしかありません。