北東アジアを考えよう!

北東アジア(日中韓台朝)をメインに、ユーラシアを包括的に捉えよう。 

トランプの裏で・・・

トランプショックの裏で 

 

 世界がトランプショックに襲われてますが、別に世界はアメリカとしか外交しているわけではありません。トランプショックの裏でも色々とアジア・ユーラシア情勢は動いています。本稿ではトランプ・ショックの裏で起きているニュースについて纏めます。

 

 

中国の国際関係 

 

 李克強首相が8日から9日にかけてロシアを訪問しメドベージェフ首相とプーチン大統領と会談しました。両国の友好関係は地域のみならず全世界的な利益になると確認されました。文化、人的交流の促進やインフラ整備の協力、金融やエネルギーの協力。また上海協力開発機構の更なる強化などについて言及されたようです。

李克強総理訪ロで交渉進展見通し 中ロ天然ガスパイプライン西ルート建設

李克强会见俄罗斯总统 — 中华人民共和国外交部

 

 中国・パキスタン関係には大きな進展がありました。13日にパキスタンのグワダル港が正式開業され、中国の商船が着岸しました。その後、陸路を通って新疆まで運ばれます。パキスタンは中東、中央アジア、インドや中国に囲まれたように存在しています。グワダルが本格稼働し、パキスタン国内から中国新疆までいたる経済回廊建設が上手くいけば、地域秩序に大きな影響を与えることが考えられます。

 

www.bbc.com

 

www.youtube.com

 

 

中国・パキスタン経済回廊については以下参照。

www.sankei.com

 

 

「アメリカ後世界」への備え

 

 ほかにもEU離脱を決めたイギリスのメイ首相が6日から二日間、インドを訪問しました。インドの経済成長を自国経済のエンジンに組み込むための話をしたようです。英印の二か国間自由貿易協定の計画もあるようです。

jp.wsj.com

 

 

 

 

finance.sina.com.cn

 

 

どうやら各国とも「トランプのアメリカ」「アメリカの栄光なる孤立」に備えているのだと考えられます。

外国人とコミュニケーションするコツ

外国籍児童の指導や外国人の生活支援をするような方は参考にしてみて下さい。

 

 

むろん、その外国の言葉が出来れば問題ないですが

皆が皆そういうわけにもいかないので、「外国人にとって分かりやすい日本語」を話すように心かけましょう。

 

①短い文章で話しましょう。
日本語の「~て、~て」ででつなげる話し方は止めて下さい。

 

②簡単に言い換えましょう。
例 防寒具→「寒いのを防ぐもの」 選挙→「皆で偉い人を選びます」

 

③相手の母語の語順を意識しましょう
後置修飾型の言語を母語にしている人は、日本の前から修飾する言葉に慣れていません

 

④大きな声でゆっくりハッキリと話しましょう
外国人とのコミュニケーションに限りません、自閉症児や知的障害者とのコミュニケーションにも困りません。

 

⑤翻訳アプリを活用しましょう
単語レベルだったら充分対応応できます。相手がスマートフォンをいじっていても怒らないでください。

外交モンスターベトナムの実力。

環太平洋国家のダークホース、ベトナム

 

 フィリピンの大統領のドゥテルテ氏が中国に訪問し南シナ海におけるパワーゲームが新しい局面を迎えそうです。そんな中、こんなニュースが飛び込んで来ました。

 

www.sankei.com

 

 

ベトナム南シナ海で中国の圧力を受けている国です。南シナ海で中国公船に嫌がらせを受け大規模な反中デモも発生しました。ここで、中越関係とベトナムの外交力の上手さについて纏めてみます。

 

 

ベトナムナショナリズム

 

 もともと北ベトナム地域は後漢王朝への反乱以来、中国への約900年にわたる抵抗の末に国家を成立させた歴史を持ちます。チュン(徴)姉妹の反乱は世界史にも出てきましたね。その後も宋・元・明・清の歴代王朝の圧力から1979年の中越戦争に至るまで、中華王朝から圧力を受け続けてきました。なので、ベトナムは基本的に反中感情が日本と同様に高く、2015年のピューリサーチの調査では対中好感度は19%で、太平洋国家ではワースト2位でした。

 

 

外交力モンスターベトナム

 

 ベトナム社会主義国家で、一応政治的には中国の親戚です。しかし、上記に記した通り、現実問題では中国の圧力から如何に身を守るかもベトナムの大きな課題です。もちろん、中国との貿易もベトナム経済に貢献しているので、反中一辺倒でも親中一辺倒でもない脅威の外交テクニックを発揮します。

 ベトナムは2010年、カムラン湾に、ロシアの支援を受けて、潜水艦、空母を含め、あらゆる国の海軍艦艇にサービスを提供する総合港の建設計画を発表しています。また翌年にはロシアからキロ級潜水艦6隻を購入し、すでに3隻が配備されています。カムラン湾の北、ニャチャンの軍港にはインド軍艦の駐留も要請しました。そして2015年、オバマ大統領の訪越でアメリカからベトナムへの武器輸出を完全解禁されました。

 2014年の反中デモの直後もグエン・フー・チョン書記長の特使としてレ・ホ・アイン党書記局常務が訪中します。ベトナム共産党グエン・フー・チョン書記長も2015年に親善のために訪中します。帰国後はロシアと自由貿易協定を締結。その翌日にアメリカ軍艦が寄港し、米越の軍事関係強化を表明します。わずか数日で中露越それぞれとの関係を切り盛りします。ベトナムTPPにも参加しAIIBにも参加しています。

 

中華帝国から経済的利益を享受し、米帝国と露帝国からは軍事と経済利益を引き出す。まさに脅威の外交テクニックと言えます。

 

blogos.com

 

 

www.bbc.com

 

中越関係に突然のきな臭さ、関係悪化を招いた3つの伏線と2つの地雷(いまじゅん) : 中国・新興国・海外ニュース&コラム | KINBRICKS NOW(キンブリックス・ナウ)

 

 

 

防衛省防衛研究所紀要第18巻第1号(2015年11月)

ベトナムの全方位「軍事」外交  南シナ海問題への対応を中心に

庄司智孝

http://www.nids.go.jp/publication/kiyo/pdf/bulletin_j18_1_5.pdf#search=%27%E3%83%99%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%A0+%E5%A4%96%E4%BA%A4%E5%8A%9B%27

 

 

ベトナムのポテンシャル

 

 ベトナムは86年以降、市場開放政策をとり様々な改革を断行していきます。1989年には農業の生産性を向上させ、世界第三位の米輸出国になります。2000年代は平均で7,25%の経済成長を記録します。一人当たりの国内所得も2000年の402ドルから2010年には1174ドルに上昇しました。また、少子高齢化の問題もベトナムはまだしばらくは無縁と言われTPPでは独り勝ちも予測されています。

 

 

現在、ドゥテルテの言動に混乱させられていますが、ベトナムも油断できないです。

 

 

jp.wsj.com

 

 

 

引用・参考文献

 

 

 

安田峰俊 アジア発中国本音の評判「シナ人を叩き出せ」 P190

 

 

 

中央公論 2016年 11 月号 [雑誌]

中央公論 2016年 11 月号 [雑誌]

 

P73  対談 日本人が”中国の論理”を読み解けない理由

岡本隆司氏と富阪聰氏の対談より

 

 

 

 P191 P194

 

 

「多様性」を抱える事は面倒くさい。だけど「多様性」を抱え込むと最強だ。

「多様性」は面倒くさい

 

 昨今、「多様性」をめぐる議論が色々とされていますね。僕も「多文化共生」を作るような場に色々と立ち会っています。具体的には在日外国籍児童の学習支援などを通じて社会の多様性に貢献するというモノです。

 

  そういう場で感じるのが「多様性というのは悉く面倒くさい」という事です。

 

どういう事かと言いますと、その国や来日している家族の階層によって、

  身に着けている学力がはなはだしく異なり一律の対応が出来ないのです。

  もちろん身に着けている日本語のレベルも違います。

 例えば、日本だと小学校から中学校までは基本的に落第はありません。それに義務教育なので、日本国内で暮らしている限りどんな人でも15歳以上の人は中学校までの学力が備わっています。しかし、国や過程によっては、母国で小中学校を満足に履修せずに日本でいきなり日本の高校過程を履修する事になる事もあり得ます。落第を小中で経験したりした場合、18歳や17歳で高校一年生という事もあり得ます。様々な国籍の児童が集う多様性のある学校や教室というのは非常に面倒くさいのです。

 

 

なぜ「多様性」を抱え込むのか

 

 そんな面倒くさい「多様性」をなぜ社会は抱え込もうとするのでしょうか。それは多様性を抱え込んだ社会は、

 

  柔軟性が生まれ前代未聞の事態にも対応がしやすく生存率が高まるからです。

 

 生物で考えてみましょう。単細胞で遺伝子をコピーして増殖する生物は、ものすごく効率的に個体を増やせます。しかし、最大の弱点は何かウィルス性の病気が流行った時に一発で全滅する可能性もかなり高いです。他には極端な例ですが、日本で米食しか許さない法律が出来たとします(つまり食文化の多様性が無い状態と考えて下さい)しかし、何かの拍子で米に罹る病気が流行り米が全滅したら同時に日本人の主食は消えます。食文化の多様性があれば、米が絶滅するような事があっても麺を食べたりナンを食べる事が出来ます。

 

「多様性を抱え込む事」は社会や組織が生き延びる確率を上げる合理的な選択なのです。多様性社会建設のためにコストを払うのはこのためです。

 

 

 

日中にとっての朝鮮半島情勢

相変わらず騒がしておりますが

 

 相変わらず、朝鮮半島が騒がしいです。北朝鮮による核実験や弾道ミサイルの発射。それによるTHAAD配備。それに呼応して中韓関係や中韓米ロ関係の悪化と色々と事態が動いています。そんな中昨日「BSプライム・ニュース」で北朝鮮情勢が特集され、その中で興味深い指摘があったので、それも踏まえて北朝鮮情勢について纏めていきます。

 

因みに放送されたVTRは以下より見られます。

 2016/10/10 『北朝鮮祝賀日に何が? 訪朝教授が見た金体制』

www.bsfuji.tv

 

 

 

 

地理としての朝鮮半島

 そもそも朝鮮半島というのは古代から現代まで、日中にとって中々扱いずらい地域でした。なぜなら朝鮮半島はお互いに異民族が侵攻に来る時の橋みたいな地域でした。

 日本にとって分かりやすい例は元寇です。モンゴル軍は朝鮮半島から対馬を通って日本に来ようとします。また中国から見れば、中世豊臣秀吉朝鮮出兵豊臣秀吉は中国大陸まで進もうとしていたといわれている)に際して明朝は援軍を出してせき止めました。近代日清戦争朝鮮半島で闘い、20世紀朝鮮戦争ではアメリカと朝鮮半島で戦争します。つまり、朝鮮半島という地理が持っている性質として、

 

中国にとって太平洋の異民族勢力が入ってくる通り道であり

日本にとってシナ大陸から異民族勢力が通ってくる道なのです

 

 

朝鮮半島の統一は皆が望むが実行されるのは御免だ

 このような性質があるので、ある意味で言うと現在の状況はある意味、中国にとっても日本にとってもベターな状況です。仮に、韓国・アメリカ主導で北進統一されれば、中国やロシアにとって軍事的脅威になり、再び太平洋勢力が大陸への干渉を強める事がしやすくなります。反対に、朝鮮主導の南進統一になれば、日本に対する軍事的圧力がより強くなります。

 

以下の記事も参考にしてみて下さい。

jp.sputniknews.com

 

 

AIIBと一帯一路の関与

 上記のような理由から、朝鮮半島有事に対する危機管理や保障は上手く動いていません 。そこでAIIBが重要な役割を担う可能性があります。

 朝鮮半島の統一をドイツ型を持ち出して考える事は多々ありますが、現実的に難しいです。更に韓国と朝鮮の経済格差と現状の韓国の国力を考えると支えきれません。そのコストを如何に分散するかというのは北東アジア情勢の大きなキモになります。もちろん、ADBやIMFと言ったアメリカ主導の銀行も融資や援助をする事になると思います。

 また、北朝鮮と国境を接している東三省の昨今の経済成長率が芳しくありません。これには、習近平による国内政策もありますが、北朝鮮に対する経済制裁の影響もあります。仮に、北朝鮮が開放され東北三省が自由に貿易ができるようになれば、これは中国にとってもいい事です。米韓による北進統一に拒否感がある中国にとっての理想は、少なくとも北朝鮮ベトナムラオス、昨今のミャンマーに近づきながら、朝鮮半島が中国にとっての第二・第三の香港や台湾のような役割を担う事だと思います。

 朝鮮が完全崩壊する統一のシナリオにしても、朝鮮が市場化自由化してソフトランディングする統一のシナリオにしても、莫大な費用が必要です。その費用の保障としてAIIB、中国が担う役割は大きいです。もちろん、韓国も朝鮮も何とかして金を引っ張ってくるような戦略を練るはずです。

 

 

ユーラシア横断鉄道敷設計画が朝鮮半島に及ぼす影響に関する報道です。

www.youtube.com

 

 

 

 

今回の原稿は日中にとっての朝鮮半島を考察しましたが、もちろん、朝鮮半島朝鮮民族のモノであり、韓国も朝鮮も別に日本と中国のために存在しているわけではありません。もしかしたら平和統一のために日中双方の政府にとって不愉快な事も十分起き得ます。

 

この原稿を見て不愉快な思いをされた方がいれば批判を甘んじて受けます。

 

 

 

参考資料

中朝関係を整理したい方はこんな本があります。興味がある方は読んでみて下さい。

 

最後の「天朝」――毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮(上)

最後の「天朝」――毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮(上)

 

 

 

最後の「天朝」――毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮(下)

最後の「天朝」――毛沢東・金日成時代の中国と北朝鮮(下)

 

 

 

北朝鮮の行動原理である主体思想がどのような経緯で作られたか、少しだけ語られます。

www.youtube.com

 

AIIBが北朝鮮危機に対する保障になりうる可能性について、柯隆氏が言及。

 

中国年鑑 2016

中国年鑑 2016

 

 

 

 

中国と日本をめぐる社会とか自由に関する皮肉な話。

日本って“ジユウ”なの?

 

   中国を経験した日本人どうしで飲み会を開いたり、インターネットで会話すると、こんな話題になる事が多いです。

 

「なんか、日本って自由なんだけど自由じゃない感じ?中国は自由じゃないんだけど自由って感じ」

 

 一般的に自由の無い一党独裁国家の中国で、なぜか日本社会にない不思議な自由を味わう経験する事が多々あるようです。雲南省の辺境のホータンプー村の日本人は

「中国社会や政治は自由(リベラル)じゃないんだけど、一般生活では自由(フリーダム)で、日本よりも中国の方が気楽」と言ったような事を述べていたりします。またポーランドソ連影響下にあった時代に日本を訪れた、レフ・ワレサ「日本は社会主義が成功した唯一の例だ」と述べていたりしています。昨今では自民党改憲草案がとても中国的と言いますか前近代的であることが指摘されたりしています。以下の私のブログ記事を参考にしてみて下さい。http://syuturumu.hatenablog.com/entries/2016/10/07

 さて、この不気味な状態を考察する際にいくつかのキーワードが考え方がヒントになると思います。それは「中国化する日本」です

 

 

中華文明の端・太平洋文明の端

 

 私たちは一般的に歴史や現象を「近代化=西欧化・欧米化」で捉えるわけですが、「中国化する日本」とは前近代における先進文明、もしくは亜近代文明である「中国文明化」を意識しようというわけです。「中国化」と言いますと少々語弊が生じるので、言い方を変えますと「伝統的な儒教を基にした統治強化」と言ったほうがしっくりくるかもしれません。実をいうとこうした歴史観や日本社会勘は結構古くから存在します。最近でも以下のような本が出されました。

 

 

 

本書の内容を説明しますと、「近代は中国が既に中世までに実現し、日本の歴史は近代化=中国化とそうでない時期を一定のリズムで繰り返している」というモノです。

 

 今の日本で「日本は中国と一衣帯水の隣国である」「日本は中国からずっとモノ事を学んできた」というのは少々勇気がいる事ですが、歴史の事実として日本は漢字を始め中国の古代文明を様々な形で吸収しました。嫌でも、無意識のレベルで日本人の思想や行動原理、政治思想に「中華文明」や「儒教文明」が組み込まれていると考えた方がいいようです。

しかし、日本は有色人種初の先進国として初めて近代化に成功しますが、そのキッカケがアメリカとの接触です。また、「菊と刀」によると日本の天皇崇拝には、ミクロネシアポリネシアの太平洋の島国との共通性が見いだせるようです。つまり日本を考えるには、「中華文明の端としての日本」と「太平洋文明の端としての日本」をバランスよく考察しなくてはいけないと思います。

                         日本の官僚=儒教システム?

 

 実をいうと、日本の官僚システムはとても儒教的と言われています。官僚が非常に実力主義で登用されます。そのルーツを明治維新にもとめる事が出来るようです。明治維新は「維新」の文字が示す通り「維」持と革「新」が混ざったような概念で、直接「革命」とは表せないような現象です。Revolutionと完全なイコールで結べません。なぜでしょうか。

 

 それは明治維新が「下からの近代化」ではなく、武士などのエリート階級が、欧米列強の脅威に対抗するために天皇や古いシステムを復古(維持)しながら、士農工商などの身分制の廃止や国語教育や近代軍隊など、国民国家に向けた諸改革を断行します。つまり、尊王攘夷日本民族を作り上げその伝統や連続性を守りながら外的圧力に対抗するために社会システムを革新するという、欧米先進国では見られないような形で近代化していきます。この天皇を維持する武家などのエリート層、彼らの教養は漢文や東洋思想です。「攘夷」という言葉は元々、中華世界を中心に見た時の野蛮人を表す概念です。さらに、これらの層は江戸時代の末期には行政管理を主に担っていました。西欧由来の概念を輸入するときもわざわざ漢字(Chinese characterを使って創造します。こうした事からも、日本の社会や政治を「脱亜入欧」「近代化=欧米化」の枠組みだけで考えては限界がある事は明らかだと思います。

 実をいうと中国的な特徴というのは戦後の政治現象にも見られます。国民に選ばれた政治家よりも官僚や省庁の力が反映されやすかったり、党内の派閥争い(中国的にいうと権力闘争でしょうか?)や党派性が主に政治に影響を与えたりします。また、政治家も政治の手腕や思想などではなく「良い人っぽい」「キャラクター」が立っているといった、道徳や人情で支持される傾向があります。これは中国政治の「徳治」に似た節があります。タレント議員の多さや、小泉政権自民党政権を考えてみればあながち外れていないと思います。

 

(なぜ”失われた20年”を上手く脱却できていない政党がここまで粘り強く支持されるかもここにヒントがあるような気がします。ただ旧民主党の悲惨なまでの統治能力の無さなどを思えば、自民党が支持されるのも仕方ない気がしますが)

 

日本は中国と同じではありません。基本的に自由な国で、人権も保障されます。しかし、どうも、皮肉にも同じような所があるのも事実だと思います。お互いに自分は相手と違う!と主張するほど相手の存在が際立つところも共通していると思います。

 

参考書籍

 

 

 冒頭のホータンプー村の話はこの本にあります。

 

日本社会の奇妙な特質についての考察は様々な本がありますが、主に以下の二冊を参考にしました。

 

アジア三国志

アジア三国志

 

 第4章 日本ーパワフル、脆弱、老齢化

P114~118

 

 

中国が世界をリードするとき・上:西洋世界の終焉と新たなグローバル秩序の始まり

中国が世界をリードするとき・上:西洋世界の終焉と新たなグローバル秩序の始まり

 

 第3章 日本ー西洋ではない近代

P65~78

 

 

歴史に「亜近代」という区分を設定するべきだと提唱している

東大講義録 ―文明を解く―

東大講義録 ―文明を解く―

 

 

 

日本と中国をめぐる憲法に関する皮肉なお話。 9条の話じゃないよ♡

通常国会が始まりましたね

 

 

 本国会で憲法改正に向けての議論がより加速化する事になりますが、「中国」に片足を入れながら生きている人間としてどうしても気になる事があります。それは

自民党憲法改正草案が現在の中華人民共和国憲法とかなり似ている」という点です。「そんな筈はない。日本は中国や北朝鮮の脅威に対抗するために憲法を変えるんだ!」「え?自民党改憲って、自衛隊が国軍になって武装中立に近づくことじゃないの?」と思いの方は、以下から自民党改憲草案の全文を見てみて下さい。

 

https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/130250_1.pdf

 

 

その前文で「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚」するべきだという事が高らかにうたわれています。個別の条文を見ても、国民に一定の態度を要求している部分が現行憲法よりも格段に増加しています。また1021では現憲法では公務員のみが追っている憲法尊重義務を全国民が負う事になっているため、これらの「態度の要求」も法律により具体化されることで明確に憲法上の義務となり得る事が指摘されています

一方の中華人民共和国憲法の条文を一度でもご覧になれば、それが国から国民に当てた義務規定のオンパレードとなっていることに気づくでしょう。

中華人民共和国憲法 - 参考

 

 

また、自民党憲法草案の前文第三段落には

「和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」

 

草案第24には

「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」という文章があります。

 

すでに多くの人が指摘しているように、「和を尊ぶべし」といった道徳観念を憲法の条文に書き込むことは。国家権力を制限し人権(個人としての権利)を保障する、という近代的な立憲主義の考え方と基本的に相容れません。むしろ、国家機関が国民の道徳規範に対して何らかの規定を行い、「人民が守るべき道徳的規範」を政治的キャンペーンの形で広く国民に示すという、中華人民共和国の政治手法を彷彿とさせるものです。実際のところ、

 

中華人民共和国憲法493には、「父母は、未成年の子女を扶養・教育する義務を負い、成年の子女は、父母を扶養・援助する義務を負う」「家族が互いに助け合う」事を国民の義務とする条文が書き込まれています。

 

 

 さらに、自民党憲法草案第12には

「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益および公の秩序に反してはならない

 

そして13には

「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益および公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない」

と書かれ、国民の権利が、現行憲法のように「公共の福祉」ではなく、「公益」や「公の秩序」を優先すると明確に規定されています。

 このような「私」的な権利に対する「公」の利益や秩序を優先させる秩序概念も、伝統中国から現在の共産党統治に受け継がれているものと極めて似通っています。実際のところ、

 

中華人民共和国憲法51には

「中国公民は、その自由及び権利を行使するときには、国、社会及び集団の利益並び集団の利益並びに他の公民の適法な自由及び権利を損なってはならない」という自民党憲法草案とほぼ同じ内容の条文が存在しています。

 

 

このように、自民党改憲草案と現行の中華人民共和国憲法が似た性質を持っているという事をお分かりいただけたでしょうか。

 

 

 

 

因みに、憲法に関しする私の考えを大ざっぱに述べると、私は改憲派です。

憲法9条を変えて米軍依存を軽減し武装中立を進める。中国やロシアや韓国などの防衛大学校の相互交流を進めながら、緊急連絡網やホットラインの多チャンネル化を進める。核武装に関しては断固反対

 

同性婚を認めるために憲法の家族に関する条項を変える。

 

労働者の権利の保護と個人権の尊重を強化する。 

 

二重国籍やミックスルーツ、日本国内の異民族の存在を認める。

 

大ざっぱに説明するとこうした考えを持っています。

 

 

 

 自民党政権は、「自由・民主・人権・法治」の価値観を共有する国と協力関係を深める“価値観外交”を進めています。無論、中国はこれらの価値観を共有する国ではありません。しかし、自民党改憲草案が中国憲法と似たような価値観を持って設計されている事は上で述べました。この事実に関して、

 

特に「中国や北朝鮮の脅威に対抗するために憲法を変えるんだ」

「日本と中国が同じなわけがない」「愛国保自民党が真の日本を取り戻す」と考えて憲法改憲に賛成している方は何を思うのでしょうか。また自民党はこの草案に対して「中国憲法と似ている部分がある」と質問された場合はどう返答するのでしょうか。色々と気になる所です。

 

 

 

文章は以下の書籍から引用しました

 

引用箇所 P107~109

 

 

 

 

 

参考資料

 

中国と日本の憲法に関する議論は以下のような有識者も指摘しています。

 

鈴木 賢 「自民党草案の反立憲主義的性格について 中国憲法との比較の視点から」

http://www.juris.hokudai.ac.jp/ad/wp-content/uploads/sites/5/2016/01/booklet35_03.pdf

 

 

直近ではこうした議論もありました。

 

www.huffingtonpost.jp

 

 

憲法に「家族」「緊急事態条項」追加の意図は―自民党草案を読む - Yahoo!ニュース

 

www.jiji.com

 

 

 

また、自民党改憲草案に強く影響を与えているとされる日本会議に関しては以下の書籍があります。

 

 

日本会議の研究 (扶桑社新書)

日本会議の研究 (扶桑社新書)