『ゴールデンカムイ』を読んで”ウイグル”を想う。
漫画『ゴールデンカムイ』面白いですよね
この漫画は、北海道を舞台に様々な都市伝説や歴史ロマン、アイヌ固有の文化の描写を織り交ぜながら描く冒険活劇です。そして、アイヌ文化の写実性や漫画そのものの面白さが評価され、様々な賞を受賞している漫画です。詳しいあらすじなどはウィキペディア参考にしてみて下さい。
既存のメディア作品などではアイヌ民族の「差別され・弱弱しい」側面が一方的に強調されてきましたが、この作品ではアイヌ民族の強い側面や美しい側面が描かれています。だからと言って、『ゴールデンカムイ』劇中でアイヌ民族が差別されていた事実を無視しているわけでもありません。様々な学術資料や作者本人の取材力や咀嚼力も相まって、アイヌ文化や明治の北海道やマタギ文化を理解する手助けにもなる本当に良い漫画です。
北海道の先住民族、もしくは日本の少数民族として認識されているアイヌですが、実を言うと、”アイヌ民族”は極東ロシアと日本にかけて存在している越境民族です。また、どうやら中華王朝と武力衝突した歴史もあるようです。以下の書籍や資料を参照にしてみて下さい。
「アイヌ民族と北方の交易」 中村和之
こうした書籍や資料を見て、僕は”アイヌ”と”ウイグル”は色々な意味で似ているなと思ってしまいます。”ウイグル”も中国とロシアに跨ぐ越境民族で、中国にとっての辺境民族です。また、近代以降の民族問題を見てもどことなく共通する所があると感じます。
例えば、以下のような事例があります。
ウイグルにとって「ナイフ」というのは伝統的な工芸品でありアイデンティティでもありますが、昨今の情勢悪化で業者に実名登録を課したり、当局から規制の対象になっています。
実をいうとアイヌでも似たようなことがありました。生活や信仰に密着する狩猟道具やサケの自由採取を禁止された歴史がありました。
領域国民国家の呪い
現代は領域国民国家を基本単位に運営されています。それゆえ、アイヌやウイグルのような辺境越境少数民族の問題は大なり小なり存在しています(いました)。たとえばロヒンギャ・クルドetc。仮に、ウイグル族が現行の新疆自治区を中国から切り離し、独立を果たしたとしても、現在の新疆自治区内のカザフやキルギス、回民族などが少数民族問題になります。
もしかしたら、この越境少数民族の問題は領域国民国家を運営している以上、必ずついて回る問題で、まさに「呪い」なのかもしれません。
昨今のウイグルをめぐる報道