中国のパクリと闘う その1 ”パクリ”を往なす
相変わらず日本人をイラつかせる”中国のパクリ問題”
相変わらず、この手の問題はイタチごっこで、日本社会では中国と言えば”パクリ”と言っても過言ではありません。
しかし、”パクリ”はかつての台湾でもありましたし、新興国では多かれ少なかれパクリは存在します。そこで、本稿では中国人がバカだからパクるというレイシスト的な視点を避けつつ、パクリを新興国に共通する問題として捉えながら中国のパクリとも闘う手段を追及してみたいと思います。
パクリは恥だが役に立つ
儒教文化圏では師匠の教えを真似する所から学びを始めるという傾向が強いです。なので、欧米圏に比べると著作権の考えが定着しにくいと言われているようです。実をいうと日本も粗悪なパクリを行っていた時期もありました。
また最初は”パクリ”と言われていた会社の製品が段々とブラッシュアップされて独自性を獲得していったパターンもあります。サムスンやシャオミーなどはそのパターンですね。
他にも広義のパクリや真似事という意味では、You Tubeなどの「踊ってみた」「歌ってみた」コンテンツもありますね。カヴァーと言った方がいいかもしれません。そこから徐々に実力をつけて、アーティストとしての独自色を獲得していった人もいますね。
つまり、パクリは効率的に実力を蓄えるにはとても役に立つのです。
”パクリ”を往なす
消費者や新規事業を起こそうとする人にとっては安くてそこそこのモノが手に入るパクリはある意味ありがたいですが、ブランドをすでに確立し販売している企業にとっては損害以外の何物でもありません。特に中国は上にも挙げた理由の他に、文革の影響でモラルが崩壊していたり、国が人治主義だったり、厄介です。しかし、昨今のITの発達やオープンイノベーションによって、パクリさえも上手くコントロールして付き合う事も不可能ではなくなってきています。
例えば音楽で考えてみましょう。不正が横行している中国では、不正コピーは、自分たちの作品をもっとも多くの潜在的ファンに届けるための、コストのかからないマーケティング手法だと考えることで、不正と上手く付き合う事を選びました。
香香(シャンシャン)というアーティストは「猪之歌」という歌を大ヒットさせました。そのセカンドアルバムは400万近く売れましたが、問題はそのほとんどが海賊版だった事です。しかし、それはあくまでレコード会社にとって問題だったのであり、本人はそれで構わないと思っていました。有名になったことでCMなどに出演し、コンサートツアーも集客ができ、それで手に入るお金にも満足しているようです。
だからといってレコード会社が儲かる事が出来ないか?というとそうではありません。様々な方法で利益を出す試みが行われています。イギリス人のエド・ピートは、中国で音楽を商売にする別の方法を開拓しました。彼は、新人のアーティストと契約する一方で、月決めの料金で会社が抱えるアーティスト全員のスポンサーになってくれる企業を見つけます。このスポンサーこそが会社に利益を落とすのです。
エド達の会社は、楽曲をなるべく安くレコーディングをします。スポンサーのついたショーで観客を前にライブ・レコーディングをすることもあれば、安いスタジオや稽古場でレコーディングする事もあります。そういったライブや録音風景などすべてを録画して、それをもとにスポンサー名を入れた様々なビデオを作る。どの楽曲も会社のウェブサイトで発表します。それぞれのMP3データの無料ダウンロードやアルバム全体のダウンロード、そしてクレジットやアートワークという情報などにリンクが張られます。会社は通常のライブイベントを企画します。
ジーンズや飲料水のメーカーなどのスポンサー企業が出資するのは、会社に対してであってアーティストにではありません。これはインディーズとしての信頼性を損なわせないためです。出資された金額の一部は、サイトから曲がダウンロードされた回数に応じてアーティストに配分されます。
つまり、音楽は無料で提供してアーティストのマーケティングの道具にし、会社はCMの話やスポンサーを見つけるなど従来とは違う形で収益をはかるのです。
また、海外では「海賊版のパラドックス」という現象にも注目が集まっています。これはパクリなどによってコモディティ化が成されイノベーションを促したり、偽物が本物を助けている側面あるという理論です。
この理論は、ファッション業界の経済のジレンマから生まれています。消費者は今年の流行を気に入らなければ業界に収益は出ません。その上、すぐにそれに不満を持ち、翌年のデザインを買いたいと思う必要があります。技術品と違って、アパレルメーカーは翌年の製品が機能的にすぐれているとは主張できません。見た目が違うだけです。そこで、今年のデザインに対する消費者の熱を冷まさせる何か別の理由が必要となります。その解決策こそ偽物が広く出まわることで、高級だったデザインが大衆向けのコモディティになることです。そうするとそのデザインの神秘性は失われ、目の肥えた消費者は何か特権的で新しいものを探さなければならなくなります。
今回は一端、ここまでにします。
次回はモノづくりの分野で中国のパクリを上手く取り込む方法を資料を用いて紹介したいと思います。
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