中国とアフリカ 「ネオ植民地主義」か「非西欧によるアフリカ独立の支援」か (その1)
はじめに
もうすぐTICAD(Tokyo International Conference on African Development)がケニアで開かれます。この会議は日本政府主導で、アフリカの開発援助等について話し合う会議です。
日本の技術等がアフリカの発展に寄与するのは大変喜ばしい事です。しかし、ここでもやはり、中国の存在がチラついてしまいます。日本のテレビでも過去に、アフリカ市場を争う、日本と中国の姿を取材しています。
このVTRの中では、中国製の粗悪な偽物はアフリカにも流れ、日本や外国企業の損失になっている事が伝えられています。アフリカへの援助や関与に、日本企業の投資環境を整備し日本経済の成長エンジンとして働いてもらう目的があるのは疑いは無いでしょう。そして、そこで競争する中国の存在は目障りのハズです。
本稿では、中国とアフリカ大陸の関係について、回数を分けて見ていきます。第一回目の本稿では、中国とアフリカの関係について、歴史的経緯を拾います。
中国のアフリカへの進出を語る時に日本のマスコミはこんな枕詞を使う事があります。「昨今の経済成長と膨張する中間層のための資源確保を目的にアフリカに近づく」
確かに間違ってはいません。しかし、「昨今の経済成長による進出」この部分に釣られると、中国のアフリカ進出のイメージや、中国政府が持っている世界観のイメージや正体が掴めません。では本題を始めましょう。
中国・アフリカ関係史
中国とアフリカの接触には意外と歴史があります。陶器と絹の交易記録が残る宋朝。15世紀の鄭和の遠征。また17世紀にはオランダが黒人奴隷を台湾に連れてきています。そして、一部は大陸にも渡っているようです。その後の帝国主義の時代は、逆に、欧州植民地で中国人労働者を雇い、アフリカの鉱山や建設現場に送り込む事例もあったようです。
時代を人民共和国成立後までに遡りましょう。中国政府は主に6つの形でアフリカに関わっていきました。
国家主権承認と国連加盟をめぐり台湾と外交のうえでの闘い。
共産主義革命や毛沢東思想のアフリカ大陸全土や第三世界への拡散。
対立する米ソ超大国の「中間地帯」と見ていた。
1960年以降、世界を舞台にした中ソ競争の一部として、中国政府はアフリカ諸国の支持をめぐり激しくソ連と競いあった。
アフリカは中国政府の外交や対外援助の方針を試す試験場。
1955年に開かれたバンドン会議(アジア・アフリカ会議)でアメリカにもソ連にも属さない、植民地となったアフリカやアジアの国々と結びつき反帝国主義の活動を始めます。しかし、この会議そのものはすぐに形骸化しほぼ無効になります。1960年代に入ると、第三世界のアジアやアフリカ、ラテンアメリカの革命勢力を支援し、イデオロギー面での指導権獲得に一段と力を注ぎます。周恩来もアフリカ諸国を歴訪します。余談になりますが、この頃からアメリカ国内の黒人の闘争を支持する動きもありました。また、毛沢東の『中間地帯理論』もこの頃に出てきます。これは、アジアやアフリカの国々の反植民地運動等を支援しながら、ソ連勢力にもアメリカ勢力にも入らないように妨害等々を行いながら、勢力の中間地帯や緩衝地帯として働いてもらうという理論です。また林彪も65年に『人民戦争の勝利万歳!』という論文の中で、貧しいアジア、アフリカ、ラテン・アメリカの貧民の”勃興しつつある勢力”を”世界の農村”になぞらえ、西欧米諸国を”世界の都市”になぞらえました。そして、中国による干渉には言及せず、あくまで”自力更生”で、それらの”農村”の国家が”都市”を包囲して戦う事としています。このテーゼは、毛沢東思想の一部に組み込まれます。
建国直後から中国はすでにアフリカやラテンアメリカなどを視野にいれた世界戦略を練り、革命家や政治家などと関係を築きます。
ここにアフリカ側の都合も加えておきましょう。1960年代というと「アフリカの年」に当たります。1950年代末期、シャルル・ドゴール大統領が、フランスのアフリカ植民地のアルジェリア政策に失敗し、フランス共同体のアフリカ植民地が離脱します。それがきっかけでアフリカ諸国の反植民地運動が加速します。そして1960年代から続々とアフリカ諸国は欧米の植民地から独立していきます。
こうしたタイミングも相まって、中国はアフリカに関与していきます。恐ろしい事に、1960年代から毛沢東の死まで、中国国内の混乱に関わらず、中国はアフリカに関与し続けます。
下記の表では、1960年代に中国では「自然災害」で数千万人の餓死者が出ている時でも、ギニアやアルバニア(アフリカではない)に1万、1万5千tの米や麦を送ったり、70年代はタンザニアに鉄道を敷設したりしています。
中国とアフリカの関係は意外と深いです。しかし、改革開放を経て、関わり方も変わってきます。次回は改革開放以降について見ていきましょう。
以下を引用しました。
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