北東アジアを考えよう!

北東アジア(日中韓台朝)をメインに、ユーラシアを包括的に捉えよう。 

新シルクロードは新たなる段階へ

「一帯一路」を現時点で総括してみる

 

 中国が2013年に提唱した「21世紀新シルクロード」ですが現時点で総括してみたいと思います。この「一帯一路」は中国内陸から欧州までをつなぐ「陸上シルクロード」と南シナ海とインド洋を通る「海上シルクロード」から成ります。

 

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 まずは「陸上シルクロード」ですがこれは60%成功していると評価していいと思います。すでに中国とドイツまでを結ぶ鉄道が開通され実際に貨物輸送も開始されています。他にも新疆のホルゴスで自由貿易区を設定する試みもされています。また、パキスタンを中国を結ぶ経済回廊建設も順調に進み、グワダル港は正式開業され中国の船も寄港しました。国内の内陸部の経済成長率もそれなりに高い水準を保っています。内陸部の経済成長は単純に「新シルクロード」政策のためと言いにくい所はありますが、「陸上シルクロード」や中国国内の「シルクロード経済ベルト建設」が経済成長に一定の貢献をしているのは間違いなさそうです。

 

www.youtube.com

 

www.youtube.com

 

 

グワダル正式開港

 

www.bbc.com

 

 

2016年の上半期の30省区市のGDP成長率。上半期の目標と一年の目標。

これを見るとやはり内陸の省の成長率は高いです。

 

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中国国内の経済ベルト建設は以下の記事を参考に。

http://syuturumu.hatenablog.com/entries/2016/11/17

 

 

 

 次に「海上シルクロード」ですが、こちらはご存知の通り、「南シナ海情勢」が関わってきます。フィリピンのドゥテルテ大統領に対しては「対中傾斜」と評価されていますが、まだ分からない所があります。禁漁区を設定する事を中国側に提言したり、強かな戦略で中国を振り回しています。またベトナムも独自の外交テクニックでバランスをとっています。他にマレーシアなども中国と適切な距離の取りかたを模索しているように見えます。「海上シルクロード」政策に関して点数をつけるなら30点といった所でしょうか。ただ、「海上シルクロード」とならなくてもミャンマーパキスタンなどから海に出る道ができれば、もう少し点数が上がると思います。

 

www.asahi.com

 

j.people.com.cn

 

 

 

ベトナムの外交テクニックに関しては以下の記事を参考。

http://syuturumu.hatenablog.com/entries/2016/10/23

 

 

 「一帯一路」と「AIIB」には中国国内の過剰生産インフラの調整内陸や辺境地帯の経済成長、内陸部と沿岸部の格差是正が目的にあると言われています。なので新シルクロード建設政策の勢いはまだ続くと思います。無論、ここにはアメリカの経済政策など個別の外交事案も関わってきます。これからも慎重な姿勢で観察する必要があると思います。

 

 

金融ブロックとしての新シルクロード

 

 このほど、中国で第三回目の世界インターネット会議が開催されました。そこで一帯一路のIT化をテーマにした会議があったようです。そこで、新シルクロード沿いの国家のインターネットインフラ建設の支援を行い、陸上シルクロードをIT化させる構想が話されました。また少し前ですが、中国とロシアがサイバー空間に関する話し合いを行い、そこでも新興国発展途上国のネットインフラ建設支援が話題になりました。

 

 

field.10jqka.com.cn

 

www.wicwuzhen.cn

 

 

finance.ifeng.com

 

 

 

 

 以下の地図はどの国がどのネットサービスをよく使っているかの図です。この地図に記されている通り、すでにサイバー空間にも国境線のようなモノが引かれています。将来的に一帯一路のIT化や中露の協力でユーラシアにGoogleの支配が及ばない、ワールド・ワイド・ウェブから隔絶された新しいネット勢力のブロックが広がる事が考えられます。

 

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 ここからさらに考えられる事があります。それは、ユーラシアに中露が主導するネット金融ブロックが確立される可能性です。IT化は金融の分野にも及びます。これは様々な取引を迅速に行い、今まで流れにくかった新しい分野に資金を流しやすくし、起業をしやすくしたりイノベーションを加速させたりいい点もあります。しかし、マネーの流出もしやすくなりました。一国の国家予算ほどの資金が一秒で世界中を飛び回る時代なのです。

 つまり、ブロックを作って資金の流出を食い止めることは国家経済を考える上で重要な要素なのです。そこで鍵になると考えられるのが「ネット検閲」や「ネット主権」になってきます。中露を始めとするユーラシア国は権威主義国家が多いです。これらの国では様々な理由で「検閲」を必要とするので、「ネット検閲の技術」は大歓迎でしょう。

 どうやら21世紀の新シルクロード「ネット検閲ロード」であり「ユーラシアサイバー金融ロード」にもなりそうです。

 

 

 

 

 

参考VTR

 

アルゴリズムはどのように世界を変えたか?というTEDトークです。ここではサイバー空間創造にも現実空間の工事が必要なのです。

 

 

www.youtube.com

 

 

 

 

CCTV制作の一帯一路に関する番組で「金融」をテーマにしています。

 

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