北東アジアを考えよう!

北東アジア(日中韓台朝)をメインに、ユーラシアを包括的に捉えよう。 

外交モンスターベトナムの実力。

環太平洋国家のダークホース、ベトナム

 

 フィリピンの大統領のドゥテルテ氏が中国に訪問し南シナ海におけるパワーゲームが新しい局面を迎えそうです。そんな中、こんなニュースが飛び込んで来ました。

 

www.sankei.com

 

 

ベトナム南シナ海で中国の圧力を受けている国です。南シナ海で中国公船に嫌がらせを受け大規模な反中デモも発生しました。ここで、中越関係とベトナムの外交力の上手さについて纏めてみます。

 

 

ベトナムナショナリズム

 

 もともと北ベトナム地域は後漢王朝への反乱以来、中国への約900年にわたる抵抗の末に国家を成立させた歴史を持ちます。チュン(徴)姉妹の反乱は世界史にも出てきましたね。その後も宋・元・明・清の歴代王朝の圧力から1979年の中越戦争に至るまで、中華王朝から圧力を受け続けてきました。なので、ベトナムは基本的に反中感情が日本と同様に高く、2015年のピューリサーチの調査では対中好感度は19%で、太平洋国家ではワースト2位でした。

 

 

外交力モンスターベトナム

 

 ベトナム社会主義国家で、一応政治的には中国の親戚です。しかし、上記に記した通り、現実問題では中国の圧力から如何に身を守るかもベトナムの大きな課題です。もちろん、中国との貿易もベトナム経済に貢献しているので、反中一辺倒でも親中一辺倒でもない脅威の外交テクニックを発揮します。

 ベトナムは2010年、カムラン湾に、ロシアの支援を受けて、潜水艦、空母を含め、あらゆる国の海軍艦艇にサービスを提供する総合港の建設計画を発表しています。また翌年にはロシアからキロ級潜水艦6隻を購入し、すでに3隻が配備されています。カムラン湾の北、ニャチャンの軍港にはインド軍艦の駐留も要請しました。そして2015年、オバマ大統領の訪越でアメリカからベトナムへの武器輸出を完全解禁されました。

 2014年の反中デモの直後もグエン・フー・チョン書記長の特使としてレ・ホ・アイン党書記局常務が訪中します。ベトナム共産党グエン・フー・チョン書記長も2015年に親善のために訪中します。帰国後はロシアと自由貿易協定を締結。その翌日にアメリカ軍艦が寄港し、米越の軍事関係強化を表明します。わずか数日で中露越それぞれとの関係を切り盛りします。ベトナムTPPにも参加しAIIBにも参加しています。

 

中華帝国から経済的利益を享受し、米帝国と露帝国からは軍事と経済利益を引き出す。まさに脅威の外交テクニックと言えます。

 

blogos.com

 

 

www.bbc.com

 

中越関係に突然のきな臭さ、関係悪化を招いた3つの伏線と2つの地雷(いまじゅん) : 中国・新興国・海外ニュース&コラム | KINBRICKS NOW(キンブリックス・ナウ)

 

 

 

防衛省防衛研究所紀要第18巻第1号(2015年11月)

ベトナムの全方位「軍事」外交  南シナ海問題への対応を中心に

庄司智孝

http://www.nids.go.jp/publication/kiyo/pdf/bulletin_j18_1_5.pdf#search=%27%E3%83%99%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%A0+%E5%A4%96%E4%BA%A4%E5%8A%9B%27

 

 

ベトナムのポテンシャル

 

 ベトナムは86年以降、市場開放政策をとり様々な改革を断行していきます。1989年には農業の生産性を向上させ、世界第三位の米輸出国になります。2000年代は平均で7,25%の経済成長を記録します。一人当たりの国内所得も2000年の402ドルから2010年には1174ドルに上昇しました。また、少子高齢化の問題もベトナムはまだしばらくは無縁と言われTPPでは独り勝ちも予測されています。

 

 

現在、ドゥテルテの言動に混乱させられていますが、ベトナムも油断できないです。

 

 

jp.wsj.com

 

 

 

引用・参考文献

 

 

 

安田峰俊 アジア発中国本音の評判「シナ人を叩き出せ」 P190

 

 

 

中央公論 2016年 11 月号 [雑誌]

中央公論 2016年 11 月号 [雑誌]

 

P73  対談 日本人が”中国の論理”を読み解けない理由

岡本隆司氏と富阪聰氏の対談より

 

 

 

 P191 P194