北東アジアを考えよう!

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黄龍VSバハムート (その3) インドと中国の共通利益

中国とインドの共通利益

 

 (その1)と(その2)では中印の競争や紛争の歴史を振り返りながら纏めました。今回は中国とインドの共通利益や協力関係について纏めていきます。

 

 

 

 西側世界の人間は、中印間の競争に目が行きがちで、また希望的観測で、インドは西側につき中国と全面的に戦うことを期待しますが、中印両国は、根本利益や価値観の部分で共通している部分もあります。日米同盟に慣れ切っている日本人から見ると、すごく奇妙に見える時もあります。

 

 中印間の共通利益は、二つの新興超大国が主要なグローバルフォーラムにおいて、かなりの程度、互いに協力し協調することを、可能にしています。このような共通利益の多くは、大国として再浮上するために同一の戦略を採っているという現実から生じています。そのために両国とも国内の経済の自由化を促進し、グローバル経済との統合を図っています。

 同じくらい重要なことに中国とインドは、地球温暖化への対応において、重すぎる負担を求められたくはないという根本的な利益を共有しています。1850年以降の世界の二酸化炭素の総出量のうち、中国が占める割合は8%未満です。インドの放出は中国よりもさらに少ないです。中国とインドは先進諸国が自分たちの事を棚に上げて、自分たちの発展を阻止しようとしているのではないかという不信感を共有しています。アメリカは京都議定書を批准せず、コペンハーゲンの合意に移行させ、中印両国へ環境問題で圧力をかけることに成功しました。それについて、中国は激怒しました。

 

 中国とインドがグローバルな場で共通の利益を持っていたのは、2003年のカンクンWTO閣僚会議もまたその一例です。中国とインドは、ドーハ開発ラウンドを締結するための合意を行うための譲歩をするにあたって、先進諸国により大きな負担を担ってもらうということについて、共通の利益を持っていました。この時は、インドの方が率先して、欧米諸国を批判しました

 

カマル・ナート商工大臣

「貿易交渉の結果が発展途上国の提案を求めるものであり、貿易を歪めている国内助成がー意味のある規制、先進国による市場へのアクセスの確実な改革、すべての種類の輸出補助金の廃止を伴いながらー確実に、効果的に削除されない限り、宣言の形で示した発展途上国の希望は、満たされたことにはならないのである。」と述べました。

 

 因みにこの宣言は当時の商務部長である薄熙来と共に出されました。中国とインドは地球温暖化と貿易交渉においてより大きな負担を両国に課そうとする西洋諸国に不満を持っています

 

インドの主席交渉官であるシャイヤム・サランはこのように述べています。

「能力は、発展段階とも関連がある。より豊かで進んだ国は、より貧しい国と比べて、気候変動に、よりよく対応できるのである。それゆえ、たとえ途上国の発展が、直近の未来においては、温室効果ガスを増加させることになるとしても、発展することが最もよい適応手段なのである。」

 

エネルギー政策もこれと似たような構図があります。場合によっては、ゼロ・サム競争も避けられないものとなっています。中国とインド両国がサウジアラビアから石油を買おうとする場合、高い値段をつけた方が買えます。しかしながら、中国とインドは共謀せずとも(これをやれば西側諸国からの非難は避けられない)競争が文明的なやり方で行われるようにルールを定めなくてはなりません。両国は主要な資源への開かれた継続的なアクセスが促進されるようにするという共通の目的が存在しています。中印両国は2006年、国外で石油資源に値をつける場合には互いに情報を共有するという約束を交わしました。アフリカでも2004年以降、協力の姿勢が見えます。

 中国とインドが理念を共有する分野がさらにあります。それは食料です。両国ともに工業化に伴い食料自給率は減っていくことが考えられます。故に外国から食糧をさらに輸入しなくてはいけません。この事は食糧価格の高騰や、食糧生産のための各種資源の高騰などを引き起こし、特に西側先進国の中間以下の所得層の生活に強く影響します。

中印両国にとって食糧の需要と供給について、共通のグローバル規模での予測を行うことは共通の利益です。

 

2013年3月1日インドの外務大臣S・M・クリシュナ中国の楊 潔篪外交部長の会談において、両国は、海洋対話を創設し、制度化することで合意しました。

 

「インドと中国は共に、主要な海洋国家である。両国は、長い海岸線を持ち、活動的な海軍を擁している。そこで、両国は、海洋問題を話し合うための対話の場を設けることが有益であると感じているのである」と広報官たちは述べています。

 

海洋の領域でも、中国とインドは、水産資源を保護するための実行可能で長期的なグローバルな枠組みを築くという事で共通の利益と価値観を持っている。

 

 そして、アフガニスタン情勢に対する対応でも中印は共に協力しながら対応しています。テロリストの抑え込み、アフガニスタン情勢の平定への貢献は、中国的にはウイグル族イスラム原理主義テロリスト封じ。現在のヒンドゥー至上主義的で反イスラムのインド的にも都合がいいです。

 

中国とインドの関係は、これからも競合と競争、対立と妥協がモザイクのような姿で現れる事が考えられます。二か国とも核保有国であり国境問題を抱え、民主主義と権威主義という全く異なる国家体制のため、緊張状態の緩和は一筋縄ではいきません。しかし、パキスタン情勢やアフガニスタン情勢、国際貿易や環境問題をテコにし、パワーバランスを保ちながら、協力する場面もみられる事になるでしょう。

 

 

 

以下が引用文献です。

 

 

大収斂 - 膨張する中産階級が世界を変える

大収斂 - 膨張する中産階級が世界を変える

 

 

P255~268

 

 

 

参考記事と文献

王毅出席第十四次中俄印外长会晤 — 中华人民共和国外交部

「支持推进“阿人主导、阿人所有”的阿富汗和解进程」という記述あり。

2016年4月18日に行われたロシアとインドと中国の外相会談の中でもアフガニスタン情勢平定についてお互い協力する意向をしめしています。

 

 

 

台頭するインド・中国 ― 相互作用と戦略的意義 (慶應義塾大学東アジア研究所叢書)
 

 

 

 

参考映像資料 

 

中国経済の失速以降、インドの台頭は中国国内でも意識され始めています。

モディ政権はヒンドゥー至上主義で、商業人気質と言われているので、そこも中国としては気になる所だと思います。

 


20150516 一虎一席谈 中印关系是零和博弈还是携手同行

 

 


时事大家谈:习近平高调访印,中印关系渐行渐近?

 


壹读视频 150 听说了吗,印度超过中国了!