読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

北東アジアを考えよう!

北東アジア(日中韓台朝)をメインに、ユーラシアを包括的に捉えよう。 

黄龍VSバハムート(その2)

(その1)では戦後から冷戦までの、中印関係の一番、簡単な所を纏めました。今回は主に2000年以降の動きについて見ていきます。

 

 

黄龍VSバハムート

 

 冷戦終結と改革開放で、アジア地域は経済の相互依存化が進みましたが、中国とインドの関係は大きく動く事はありませんでした。ヒマラヤ山脈が国境にそびえているので、政治的な理由以外にも簡単に交流が持てないのも確かだと思います。中国とインドには様々な面で分断線が引かれているのです。

 

冷戦末期において、中国はアメリカに寄りそい、インドはソ連に寄りそっていました。インドの中にはパキスタンを支援している中国を反動的と見ています。また、中国の対インド海洋包囲網「真珠の首飾り」も強く警戒しています。

 

 

「侵入を増加させることによって、中国は、インド軍をヒマラヤ山脈沿いに釘づけにしようとしているのだ。北京は、ニューデリーとの国境をめぐる話し合いを、インドに対する軍事的圧力を高め、戦略的にインドを包囲するための隠れ蓑としている」と

ブラーマ・チェラニは述べています。

 

また氏は、「インドの周囲の国々は、中国がインドを包囲するための戦場と化している。中国は、1962年の軍事的侵攻と、それにつづく地図作成上の攻勢から、水資源を押さえる事と、インドを多方面にわたって戦略的に締め付けることへと、その攻勢手段を変えてきた。チベットからインドへと流れる河川を中国がダムでせき止めることによって、インドの水資源における脆弱性が明らかとなった。インドは、核における不利な立場を、信頼はできるが、最小限の核抑止力を構築することで埋めたとしても、水資源における脆弱性は抱えたままなのである。」とも述べています。

 

元外務次官で現在は政府の国家安全保障委員会の一員であるカンワル・シバル

「彼ら(中国人)が港を設け、足場を築くやり方は、一見めちゃくちゃだが、そのなかに計算された緻密さがある。このような努力は、インドがこの地域において生来持つ影響力に対抗し、削り取ることを目標にしているのである。」

 

 

 

中印のトラブルは2000年代も継続的に起きています。

 

 

 

 インドは、2007年5月、高等行政官による中国訪問を取りやめました。アルナーチャル・プラデーシュ州生まれの一人のインド行政官にビザを発給することを拒否したからです。中国はアルナーチャル・プラデーシュ州を自国領と主張しています。中国は、同様に、インド陸軍のB・Sジャスワル中将へのビザ発給も拒否しました。中将が、中印間で係争中のジャンムー・カシミール州を管轄する将校だというのがその理由でした。インドは、これに対する報復として、インド国立軍事学校留学を目的にして訪印予定であった二人の中国人将校の入国を拒否し、予定されていたインド将校団の北京訪問を中止しました。

 

中印のライバル関係に注目し、アメリカはインドに近づくことに成功します。

 

2008年8月に、インドが民生用の核物質の取引が出来るように例外措置を与えるよう原子力供給国グループ{NSG}に働きかけました。これによってインドは核開発計画に事実上の「承認」を得たのです。9月にはNSGがインドに例外措置を与え、民生用の核技術にアクセスすることと、他国から核燃料を得ることを可能にしました。そして10月、米印原子力協定が結ばれた。このとき、マンモハン・シン首相は、ブッシュをインドの偉大なる友人と宣言し、「歴史が書かれるとき、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、我々二つの民主主義国家を近づけるために歴史的な役割を果たしたと描かれるであろう」と宣言しました。

 

 

米中間の争いにおいて、インドがアメリカ側につくことは間違いなくアメリカの利益となるが、これが長期的にインドの利益にかなうかどうかは、それほどハッキリしていない。

 

キョール・マブバニ氏はニューデリーにて

「中印はともに成長するのか、それとも別々に成長するのか」という講演を行った。その中で、氏は、中国とインドの両国は、経済成長と、文明の復興のために、極めて有望な段階に入りつつある。この貴重な機会を、ゼロ・サム地政学的競合に費やすことによって失うことは、中国とインドにとってまったく愚かなことである。このような競合は,既成の大国である西洋諸国、特にアメリカの利益となるだけである。アメリカは、中国の台頭を抑えるために、インドを当て馬にしようとしているのだ。と述べた。

これに、国家安全保障顧問のメノンは、基本的には、合意した。

彼は、「インドは、数千年に及ぶ自らの戦略文化を持っている。そのインドが、どこかの国に駒として使われることを自らに許すことはないだろう」と述べた

 

 

 世界の二大新興国として中国とインドの両政府は競争関係にあり、それはさらにヒマラヤ辺境やインド沿岸部やミャンマーにおける戦略地政学的な競争によっていっそう激しいものとなっています。どちらの国も軍隊の近代化を推進していますが(とくに海軍)おかげでどちらも典型的な「安保ジレンマ」に陥っています。つまり、互いに防衛目的のつもりで軍事投資を拡大するわけですが、それが翻って相手には攻撃的な脅威だと受け止められてしまうのです。どちらも核保有国で相手を標的にしたミサイル発射システムを開発中というのも、可燃性の高い戦略関係の一因です。チベット問題と、ダライ・ラマの亡命政府がインドに身を寄せていることも、さらに問題を複雑にしています。エネルギー安全保障をめぐる競争、並びに安全な海上交通路(SLOC)の確保をめぐる競争も、ますますデリケートになっています。

 纏めていうと、戦略的な不信感と増大する利益が、今後も中印関係の足枷となりえます。インド側からすれば、もしかすると最大の問題点は、中国にとって「どんなときでも友人でいてくれる」相手のパキスタンなのかもしれません。中国政府とパキスタン政府は1950年代初めから常に緊密な、同盟そのものの関係を保ってきました。長年にわたり、パキスタンがインドと対立するほとんど全ての事案について、中国はパキスタンの側に立ってきました。パキスタンへの最大の武器給与国は中国で、インド政府がカシミール問題などデリケートな案件を問題にしても中国はとりあってこなかったです。中パ枢軸の存在は、中国とインドの間の緊張を悪化させる一方です。

  またスリランカと中国の関係も、インドは警戒しています。タミル民族の問題から、インドがスリランカから目を離し、欧米各国も距離をとった所に中国は入ってきました。ここは、中国が海上からインドを包囲したりするための要所ともなりますし、海上シルクロードの要所にもなります。

 

 

 

今回は2000年代の主な「衝突要因」を抜き出しました。次回の記事では、中印の共通利益について見ていきます。

 

 

 

 

 

以下が引用・参考文献です。

 

www.amazon.co.jp

P251~255  第五章 地政学は収斂を阻むのか?  中印関係について

 

 

 

中国グローバル化の深層 「未完の大国」が世界を変える (朝日選書)

中国グローバル化の深層 「未完の大国」が世界を変える (朝日選書)

 

 P140~141   第三章 国際社会における中国外交のプレゼンス