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北東アジアを考えよう!

北東アジア(日中韓台朝)をメインに、ユーラシアを包括的に捉えよう。 

中露関係を整理整頓する(後編)

前編では、中露関係の歩みと、中国のロシアに対する感情を分析してみました。

前編は此方より↓

http://syuturumu.hatenablog.com/entries/2016/07/15

 

後編ではロシアの中国に対する見方などを検討して、ユーラシアの超大国の関係を俯瞰し、今後のユーラシア情勢の見通しをつけられればと思います。

 

 

 

ロシアの中国に対する見方

 

 ロシア側の評価はとても多様です。政府関係者は予想通り、両国関係について乗り気なことを言います。たとえば、

 

ロシア連邦外務省アジア第一局のコンスタンティン・ブヌコフ局長

「中国外交には、ロシアの国家利益を脅かすような要素は何一つ見当たらない。国際舞台において我々と中国との間に重大な相違はないし、中国は国際問題について前向きで建設的な役割をはたしていると見ている。ロシアにとって一部の市場で中国とは競争関係が生じつつあるが、高次元の協力関係もある。両国関係に“火”がついてしまうのを事前に防ぐべく、我々は最善を尽くしている。これを二国間で行うために50以上のワーキンググループがあるし、多国間では上海協力機構が仕組みとしてとても優れている」

 

ロシアの中国専門家、ウラジミール・サーシャ・ルーキンも、ロシアと中国の共通点を指摘します。

国際社会の構造について同じ見方を共有しているし、多極的な世界の方が好ましいと同じように思っている。国際法を支持し、国内問題への介入に敏感で、分離独立運動との闘いにおいてお互いを支援している。地域的な問題については協力しあい、経済協力の必要性もともに認識している。既存の国際金融システムの変更を希望し、両国国境の安定が必要だと考えている」

 

ロシア科学アカデミー極東研究所所長、ミハイル・ティタレンコ氏は以下のように述べます

楽観的ではあるが、過去由来の不信感がロシア社会にはまだある

 

 

ロシアの他の中国研究者はもっとはっきり懸念をあらわにします。

ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所のワシリー・ミヘエフ副所長はこう指摘します。

反中感情はとても強いし、変化している。ロシア極東を征服したいのではないかという空気もある。加えて5~6年の間に、経済的な脅威を恐れる気持ちから生まれた新しい反中感情もあり、昔ながらの反中感情と結びついた。さらにそこに人種差別的な反中感情も加わる。上海協力機構はロシアの「近い海外」で、我々は中央アジアでの中国を抑えなくてはならないはずだ。要するに、中国は競争相手に変身している。ひどい頭痛の種になりつつあるのだ。」

 

 ロシア極東地域だけでなくロシア中心地域に中国移民が大量に流入していることは、歴史的な「黄禍」の恐怖を呼び起こすだけに、多くのロシア人にとってとくにセンシティブな問題です。しかしロシア連邦外務省のコンスタンティン・ブヌコフは、2008年以降ともなると移民の流れを食い止める新規性が導入済みだと反論します。またブヌコフは

「ロシアは中国移民が欧州に向かうのを防ぐ役目を果たしている。ロシアはかつてチンギス・ハンやモンゴルの襲来を阻んで欧州を救った。今また同じことを中国についてやっているのだ」とも述べています。

 

モスクワ国際関係大学の政治学部長で中国研究の一人者でもあるアレクセイ・ボスクレンスキー

「ロシアの政策決定担当者の間で、高度な内容の綱引きと議論が秘密裏に行われている。中国をライバル視して中国の脅威を警戒するべきだという一派がいるが、中国は参考にすべき経済モデルだという考えの一派もいる」

 

ドミートリー・ストレスツォフ教授はもっと率直にこう言う。

「モスクワの政策決定担当者のほとんどは意識の片隅で、中国は今後、脅威になり得ると思っている。中国は我々を操ろうとしている

 

ミハイル・トロツキー副学長は、さらに詳しく

「中国は世界的な反米の動きの先頭にロシアを押し出して、自分たちの反米主義にロシアを利用しようとしているというのが、我々の認識だ。しかも自分は途上国のリーダーという立場を維持しながら。中国政府はロシアに”アメリカに対抗せよ”と言ってくるのだ。我々は中央アジアやアフリカにおける中国の動きも疑っている。ここモスクワでは最近、中国がいかにロシアを服従させようとしているかという議論が始まっている中国をライバル視する人は多く、脅威になり得る国として中国を警戒するべきだという意見は多い。特に極東では、中国の勢力圏のなかにロシアが収まってしまう事への深刻な恐怖がある。」

 

 

モスクワのアメリカ・カナダ研究所のセルゲイ・ロゴフ所長もこれと同意見だ。

「国際舞台のあらゆる場面で中国は以前よりも積極的だし、それは必ずしもロシアの利益に見合わない

 

 

中露関係の研究者、ボボ・ローは以下のように説明する。

中露関係は独裁国家どうしの同盟ではないし、純粋な戦略的パートナーシップでもない。関係から得られる利益は非対称かもしれないが、互恵的だという認識が前提の、限定的なパートナーシップだ。深刻な食い違いが生じても騒ぎ立てずにおく知恵が支えている関係でもある。この関係がいつまで続けられるのか、それが問題だ。戦術上の便宜性と対立予防のほかは内容に乏しく、当事者の意図的な自己欺瞞から成り立っているこの組み合わせは、長く続く安定した関係性の基礎としては実に心もとない。ロシアと中国の違いは簡単に誤魔化せない、そういう時代がやってくる」

 

実をいうと、そうした中国とロシアの不信感を増長させる出来事は2000年代の前半にも観測されました。2006年以降、武器提供も支援も急減し、年間7億ドル~10億ドル規模にまで落ち込んだ出来事がありました。この急減について、以下のような要因が考えられます。まず

 

中国の防衛技術革新によりロシアを頼る必要がなくなった。

ロシアの技術の盗用で技術革新を行ったため、ロシアの不信を買った

ロシアは中国へ提供する予定の最新兵器を、インドやベトナムに向けて提供し始め、それが中国政府の不信を買った。

ロシアによって提供されている製品が最終使用品のみなので、中国は部品供給をロシアに依存してしまうため、不満を抱いている。

 

 

石油・天然ガス権益に対するロシアの方針は2000年ごろから保護主義化したようです。これには、この時期に起きた資源価格の高騰も関係していると考えられます。また、2005年8月にロシア政府がウズベキスタンのカルシ・ハナバード旧米軍基地入りを急いだ事がありました。ロシア側の情報源によれば、中国がこの基地を獲得したい意向を示したためだと伝えられます。

 

 

 

ロシアの実情と、中露関係を規定する外部要因

 2014年以降のウクライナ情勢を受けて、ロシアは西欧米から経済制裁を受け、G8から脱退しました。それらの要素を受けて、ロシアが急速に中国を始めアジアへ重点を移し始めました。当初は早急に事態は収束に向かうと思われてましたが、その予測は大いに外れました。ロシアの国力を過少評価した事が原因に思われます

 プーチンのロシアでは乳幼児死亡率が目覚ましく低下し、男性の平均余命、自殺と殺人の発生率、出生率などが改善し、2009年以来、ロシアの人口は増加に転じています。ロシアではソ連時代から継承された高い教育水準が保たれていて、男子よりも女子のほうが多く大学に進学しています。また人口の流出よりも流入のほうが多いことからも、ロシア社会とその文化に“様々な引力”がある事の証明でしょう(日本でも中国でもロシアと言えば美女大国のイメージがありますね)また強力で粗暴だからこそ大多数の国民から暗黙の支持を受ける権威主義的デモクラシー」という性質もあの国に備わっています。

  もっとも、ロシアが主として地下資源の開発に依存する「不労所得経済」によって、また、ますます農業によって生きているというのは本当の事です。それ以外の点に関していえば、ロシアは従来からの産業で残っているものを護ることを目的とする保護主義経済にとどまっています。あの国の切り札は二つです。潜在的な富に満ちた1700万平方キロメートルの広大な国土と、ハイレベルな科学者たちを擁する1億4400万人(2013)の人口です。このポテンシャルは中国にとっても魅力的な筈です

 

中露関係の外部要因として、ロシアの欧米との距離感の他に、中国と日本やアメリカの関係があります。中露両国とも日本と領土紛争を抱えています。またロシアは中国と領土紛争を抱えているベトナムやインドにも武装を売却しています。中露両国ともに領土紛争を抱えている我が国としては、これらの外部要因も含めながら、注視していきたいですね。

 

中露関係は大局で見た際は良好と評価できます。またロシアの一般市民の間では中国に対するポジティブな感情も比較的高いです。過小評価は危険です。今だからこそ、愚直に資料に当たり、ユーラシアの行方について見通しをつけていきたいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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※『今が分かる 時代が分かる 世界地図2016』より引用

 

 

 

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引用文献

デイビット・シャンボー著

『中国 グローバル化の深層  「未完の大国」が世界を変える』P114~120

 

 

マーティン・ジェイクス著 『中国が世界をリードするとき(上)』P105~108

 

 

エマニュエル・ドット著『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』P81~91

 

 

 

参考資料

courrier.jp

 

ロシアが持つソフトパワーのご参考に。

 

 

jbpress.ismedia.jp

 

中露関係の外部要因としてのベトナムのポテンシャルを知る参考に

 

 

synodos.jp

 

中露関係とウクライナ情勢を見る方向けに。

 

 

jp.sputniknews.com

この記事の中には 以下のようにも書かれたいます。

「ロシアの対中関係の発展は独自の関心に基づいたものです。国境の問題を解決し、多くの国際問題で同一の立場を持っています。関係のレベルは全体的に上がりました。確かに日本ではこれにあまり善い反応をしめしていませんが、それでも我々が中国と仲良くするのは誰かに反対してということではなく、それが我々の国益に叶っているからです。これと全く同じように我々は日本との関係発展に関心を持っています。このために万全を尽くしましょう。日本は私たちにとってはとても重要な国なのです。」