中国を過度に恐れないー今だからこそ習近平を再考するー
今だからこそ、「習近平」を再考する
中国を過度に恐れない。そのための一歩として「習近平」を今だからこそ再考したいと思います。習近平政権以降、言論に対する締め付けや、南シナ海での軍事行動、抗日戦争のパレード、権力闘争、経済の失速。と様々なマイナス面が出てきています。
思えば、中国の総書記は任期が10年です。そう考えると、2013年に就任して3年が経過しようとしていて、任期の前半の5年が経過しようとしていると考えられます。この前半の5年に迫ろうとしているタイミングで、「習近平」の基礎情報を確認し、再考する事は無駄な事ではないと思います。
習近平の経歴
※1)習近平は1953年6月、陝西省の生まれです。父親が八代元老院の習仲勲で紅二代です。9歳の時に父親が文革で失脚し、25歳まで続きます。紅二代のイメージに反し、若い頃はそれなりに苦労はしているみたいです。
清華大学に入学し法学博士を持つまでに至ります。78年春に父親が復権し、“親の七光り”で大物軍人、耿 飈(こうひょう)の秘書という良いポストが与えられました。その後、習近平は地方を回る事になります。82年に河北省その後の25年間、福建、浙江、上海と地方を回りました。07年に中央委員会から二階級特進で政治局常務委員となり中央に戻りました。82年に北京を離れてから25年も経っていました。しかも中央には3年弱しかいたことなく、08年国家副主席に就任し、10年に中央軍事委員会副主席に就任しました。
父親のキャリアも確認しておきましょう。父親は広東省で任務を見事に果たしたのちに、81年に中央書記処の書記となり、82年には政治局委員に選出。胡耀邦と趙紫陽を支えました。しかし、86年末から87年初めにかけて全国で学生運動が起こった際、それに好意的に対応したとして、胡耀邦総書記は失脚しました。習仲勲はその胡耀邦を正面から擁護し、鄧小平と長老たちの不興を買った。87年の第13回党大会では政治局委員会では政治局委員に再選されず、88年には全国人民代表大会の常務副委員長という「上がりポスト」に就かされました。噂によると、64天安門事件では趙紫陽を支持したと言われています。信念の人であったと覗えます。
そんな、父を習近平は尊敬しているといわれ、父親の誕生日にはこのような手紙を出しました。手紙の中で、父親の「人となりに学び、成し遂げたことに学び、信じることをあくまで追求する精神に学び、民を愛する気持ちに学び、民を愛する気持ちに学び、質素な生活に学ぶこと」を誓っています。(※1
実をいうと、ここまでで、習近平は今までの中国のリーダーとは大きく違った経歴を持っています。
それは北方内陸生まれで、法学博士を持っているという点です。
鄧小平 四川省
上の地図を参考にしてみてください。
北方人で法学博士その意味とは?
この、北方人と南方人の違いは、同じ漢民族どうしでも違いが大きく、中国人でもその違いに戸惑います。以下は中国の掲示板で「中国南方人と北方人の違いは一体なんなのか」というモノです。その書き込みの一つに
北方人相信“强权就是真理”;所以喜欢当官。
「北方人は強い権力こそが世の中。だから官吏になりたがる」
というモノがあります。習近平の反腐敗運動を見ると外れてはいないと思います。
さらに、習近平の出身の省には「西安」があります。この西安は古代シルクロードの起点で、兵馬俑なんかで有名な都市です。さらに、習近平の出身地も華夏文明という現代の漢民族の重要なルーツとなる文明の土地だと言われています。
おそらく、僕の邪推ですが、習近平は内陸部で沿岸部よりも貧しい西安や陝西省がより発展したり、ブランド力が高まる政策を優先的に実行すると思えてならないのです。AIIBや新シルクロード、サービス産業の強化はこの現れだと考えています。日本でも首相を多く輩出している山口県に空港が多かったり、道路が充実していると言われていますが、それと同じような現象が起こりうる気がします。
さらに、習近平政権が行っている「都市と農村の格差解消」にもあるルーツが存在しています。それは、習近平の博士論文のテーマです。
そのテーマとは「中国農村の市場化について」です。
どうやら、この論文の中で都市戸籍と農村戸籍の違いを撤廃する事を訴えているようです。
習近平はピンチを託された人
※2)中共のシステムが限界を迎え、体制に無理がきている事は、中国共産党内部でもどうやら強く意識されているようです。ある共産党員は海外のネットにこうしたことを書き込んだようです。
我々は中共が(腐敗、専制の)現状を保持することを望まないが、中共が倒れる事はもっと望まない。我々の願いは一つ「中共が改革開放を堅持し、腐敗官僚を厳しく取り締まり、特権資本主義を打倒し、人権を尊重し、言論統制を徐々に開放し、歴史の真相を取り戻し、毛沢東の功と罪、是と非を改めて評価し直すことだ。
また、「紅二代」はその出自ゆえに今後の中国の行く末について人一倍痛切な危機感を持つ人が多いはずと考え、習近平は「紅二代」に対して、「この危機感を打破したい、自分を支えるコア支持層になってくれ」と要請したと考えられます。つまり、習近平政権は皆で一致団結し清廉潔白な共産党を復活させて、ピンチを乗り切る人材として支持されているのです。 (※2
習近平政権の前半5年の終盤に差し掛かっています。習近平政権の仕上げにはまだ早いと思いますが、彼の過去のキャリアやルーツと現在進行形の各種政策を並べ比較検討を始めるにはいいタイミングだと思います。
以下の書籍から引用しました。
www.amazon.co.jp ※1)P158~P173
www.amazon.co.jp ※2)P29~30
こちらは参考資料