中国のグローバル・インパクトを理解する意義(後編)
前篇では、中国の台頭のニュース価値を考察しました。もう一度、繰り返しますと
アメリカも日本も世界の主要な経済大国は「民主的な政治で自由経済」のシステムが殆どであるが、中国は全く異なる。
アメリカでも人口は3億前後、日本も1億弱。主要な先進国や経済大国の人口で
10億を突破している国はない。
以下では、この事実が及ぼす影響や、歴史的な位置づけを探りながら、中国のグローバルインパクトを理解する意義を考えてみたいと思います。
中国の台頭、近代西欧システムの限界
2015年、日本の集団的自衛権の行使容認や、現内閣の政治体制に反対する学生団体「SEALDs」が時の人となり新語・流行語にも選ばれました。彼らはこんなスローガンを掲げていました
「終わってんなら、始めるぞ」
日本の民主主義は終わっている。現内閣によって終わらされている。だから俺たちが始めるぞ。という意味だと思います。
彼らの主張だけでなく、近年は日本を含めて様々な所で、民主主義や資本主義といった、近代西欧発の社会システムや国家システムが限界を迎えている。もしくは終わっていると思われる現象が数多く見られると思います。その発現と思える現象と中国に関わる出来事を並べてみましょう。中国が関わる出来事は赤字で示しています。
2001年 ジョージ・W・ブッシュ政権発足 アメリカ同時多発テロ事件
2006年 第一次安部内閣発足
※21世紀初頭より原油価格の高騰.2008年6月 1バレル140ドル
昨今は解消 2015年5月現在1バレル約45ドル
2007年 史上初中国発世界同時株安 中国で高速鉄道開業
※FacebookやTwitterなどのSNSは2000年代の前半には誕生し一般開放される。
スマート・フォンの開発、発売も大体同時期
2010年 上海万博
2011年 オキュパイ・ウォール・ストリート運動
ノルウェー(反移民)連続テロ事件 アラブの春・シリア内戦の開始
日本と中国のGDP逆転
2012年 第二次安部内閣発足
2013年 パク・クネ内閣発足 AIIBの提唱
2014年 タイの軍事クーデター
更に、細かくそれぞれの国の内政に関するデータ。投票率の割合や世襲政治家の割合、自由貿易協定の枠組みの強化など、やはり近代西欧発の様々なシステムの過渡期である事が伺えます。そして、そのタイミングで中国が外に出てきたというのが分かると思います。
やはり、私は、中国の台頭は、近代西欧システムの限界や、非普遍性を象徴すると思えてならないのです。
10億人超という意味
日本では現在、少子高齢化と各種産業分野での労働力不足が叫ばれているので、人口が多すぎると逆に、国家の発展などを阻害するという感覚は理解しづらいと思います。人口は、その国が持つ各種の衣食住の生産能力、その生産を支えるための技術力や技術を支えるための公教育への投資、それらを行う国土そのものの地理条件など様々なバランスの上に成り立っています。
例えば、食糧を一週間で10トンしか生産できない自治体が無暗に、移民を入れたり、子供を多く生む事を奨励すれば、食糧が足りなくなります。昨今では少子高齢化の議論と共に適正な人口についての議論も行われています。
中国は世界一の人口と世界三位の国土を持っていますが、あまりにも国土が大きすぎる上に、その国土の半分は、険しい自然環境で食糧の生産能力が高くないのです。それに人口が加わるので、旧来であれば、こうした国家が世界的な経済大国になる事は考えられなかったのです。しかし、各種の技術革新やコストの低下などがそれらを可能にしました。SNSやスマートフォンの台頭、高速鉄道の運用のタイミングも興味深いです。
人類にとって地球は必要だが地球にとって人類はいらない。
地球の資源には限りがあります。残念ながら、地球上全ての人が先進国と同じ生活を営む事はほぼ不可能です。そこに、中国やインドといった国が豊かになっていく事は、我々の生活の質が相対的に低くなるという事を意味します。その後にアフリカの人口爆発も見込まれています。
すでに、中国やインドの台頭の影響が食糧や資源の価格に表れています。
中国のグローバル・インパクトを理解する事は、
近代西欧システムの行方を占う事と、資源獲得競争へ備える事に繋がるのです。
以下を参考にしました。
アメリカの民主主義の危機についてはこちらを参考。
中国の牛肉消費量の増加と、それに伴うその他の資源価格の上昇を扱った
150314 「世界“牛肉”争奪戦」_土豆_高清视频在线观看