北朝鮮の内情に迫ってみる。
北朝鮮の内情に迫ってみる
最近、あるVTRを見ました。それは韓国に亡命した北朝鮮人が北朝鮮について語っているものです。VTRは以下より。字幕も日本語設定にできます。
そこでは「北朝鮮でも市場経済が導入され始めている事」や「昔と今の脱北者の意識の違い」などが語られていてとても興味深かったです。そこで、できる範囲で統計や西側メディアの資料を使って北朝鮮の内情について迫ってみたいと思います。
北朝鮮経済は一応持ち直している
下のデータは北朝鮮の乳幼児死亡率の推移を反映した統計です。乳幼児死亡率は一番ねつ造しにくくその社会の内情を計り知るには適した統計と言われています。これを見ると分かるのですが、90年代のソ連崩壊とそれに伴う大飢饉以降は着実かつ確実に乳幼児の死亡率が減っている事が分かると思います。
North Korea - Infant mortality rate - Historical Data Graphs per Year
しかし08年から2011年にかけて再び急上昇しています。この時期は金正日の体調不良説がささやかれ、経済政策で大きな失策を犯したせいで治安維持部隊と民衆の衝突が北朝鮮各地で発生していたようです。(ウィキペディア 金正日の項参照)
また、こちらの資料では北朝鮮でもITが入ってきている事が伺えます。中国経由で入ったものでしょう。以下のブログは平壌で働いているインドネシア人のモノです。どうやら北朝鮮内部から各種SNSを更新しているようです。その彼が撮影している平壌の様子を見ると色々なモノは一応入ってきているようです。
以上の事からも北朝鮮が以前に比べて「食べられる国」になっている事は間違いなさそうです。
開かれた北朝鮮?
上で北朝鮮からSNSを更新している外国人を紹介しましたが、どうやら欧米の人にとって北朝鮮は「イロモノ旅行先」「マニアックスポット」として認識されているような印象があります。英語で「North Korea trip」と検索してみると北朝鮮を訪れた外国人の思い出ビデオのようなモノが見られたりします。
また平壌には日本語や諸外国語を学ぶ大学生もいます。ここから察するに、以前に比べてある程度は外国資本などが入り、北朝鮮の人たちもある程度は外国の事を知り開放的になっているのではないか?という予測が立ちます。
建国神話をねつ造中???
そうなってくると「社会主義革命」等々のイデオロギーが怪しくなって統治の正当性を欠きます。そこで必要になってくるのが建国神話です。以下のVTRの46分あたりからテドンガンから古代文明の遺跡が見つかり、それが黄河文明に匹敵する高度な文明で北朝鮮が国際学会に提出しようとして、ガン無視を食らったという話が紹介されています。もしかしたらこれを自らの建国神話やアイデンティティーに添えようとしているのかと予測されます。
中国が改革開放を始めた時に”中華民族アイデンティティー”を強調し始めたのを模倣しているのかもしれません。
結論としてどうやら、北朝鮮も北朝鮮で色々と変化や発展があるようです。これらの変化が果たして経済制裁などによる外部圧力によるものなのか。それとも北朝鮮指導部も自力で韓国とは違うやり方で自国民をなるべく食べさせる方向に舵を切ったのか。そこは分かりません。しかし、上の事から日本人や日本のメディア人に
貴方たちは北朝鮮への経済制裁の効果を90年代のソ連崩壊の頃を前提にしていないか?
という事は問えるのではないでしょうか。
以下はその他参考資料です。
北朝鮮輸入先データビジュアライズ
以下は過去の記事です
少し前のVTRですがこんな報道などもありました。
新シルクロードは新たなる段階へ
「一帯一路」を現時点で総括してみる
中国が2013年に提唱した「21世紀新シルクロード」ですが現時点で総括してみたいと思います。この「一帯一路」は中国内陸から欧州までをつなぐ「陸上シルクロード」と南シナ海とインド洋を通る「海上シルクロード」から成ります。
まずは「陸上シルクロード」ですがこれは60%成功していると評価していいと思います。すでに中国とドイツまでを結ぶ鉄道が開通され実際に貨物輸送も開始されています。他にも新疆のホルゴスで自由貿易区を設定する試みもされています。また、パキスタンを中国を結ぶ経済回廊建設も順調に進み、グワダル港は正式開業され中国の船も寄港しました。国内の内陸部の経済成長率もそれなりに高い水準を保っています。内陸部の経済成長は単純に「新シルクロード」政策のためと言いにくい所はありますが、「陸上シルクロード」や中国国内の「シルクロード経済ベルト建設」が経済成長に一定の貢献をしているのは間違いなさそうです。
グワダル正式開港
2016年の上半期の30省区市のGDP成長率。上半期の目標と一年の目標。
これを見るとやはり内陸の省の成長率は高いです。
中国国内の経済ベルト建設は以下の記事を参考に。
http://syuturumu.hatenablog.com/entries/2016/11/17
次に「海上シルクロード」ですが、こちらはご存知の通り、「南シナ海情勢」が関わってきます。フィリピンのドゥテルテ大統領に対しては「対中傾斜」と評価されていますが、まだ分からない所があります。禁漁区を設定する事を中国側に提言したり、強かな戦略で中国を振り回しています。またベトナムも独自の外交テクニックでバランスをとっています。他にマレーシアなども中国と適切な距離の取りかたを模索しているように見えます。「海上シルクロード」政策に関して点数をつけるなら30点といった所でしょうか。ただ、「海上シルクロード」とならなくてもミャンマーやパキスタンなどから海に出る道ができれば、もう少し点数が上がると思います。
ベトナムの外交テクニックに関しては以下の記事を参考。
http://syuturumu.hatenablog.com/entries/2016/10/23
「一帯一路」と「AIIB」には中国国内の過剰生産インフラの調整と内陸や辺境地帯の経済成長、内陸部と沿岸部の格差是正が目的にあると言われています。なので新シルクロード建設政策の勢いはまだ続くと思います。無論、ここにはアメリカの経済政策など個別の外交事案も関わってきます。これからも慎重な姿勢で観察する必要があると思います。
金融ブロックとしての新シルクロード
このほど、中国で第三回目の世界インターネット会議が開催されました。そこで一帯一路のIT化をテーマにした会議があったようです。そこで、新シルクロード沿いの国家のインターネットインフラ建設の支援を行い、陸上シルクロードをIT化させる構想が話されました。また少し前ですが、中国とロシアがサイバー空間に関する話し合いを行い、そこでも新興国や発展途上国のネットインフラ建設支援が話題になりました。
以下の地図はどの国がどのネットサービスをよく使っているかの図です。この地図に記されている通り、すでにサイバー空間にも国境線のようなモノが引かれています。将来的に一帯一路のIT化や中露の協力でユーラシアにGoogleの支配が及ばない、ワールド・ワイド・ウェブから隔絶された新しいネット勢力のブロックが広がる事が考えられます。
ここからさらに考えられる事があります。それは、ユーラシアに中露が主導するネット金融ブロックが確立される可能性です。IT化は金融の分野にも及びます。これは様々な取引を迅速に行い、今まで流れにくかった新しい分野に資金を流しやすくし、起業をしやすくしたりイノベーションを加速させたりいい点もあります。しかし、マネーの流出もしやすくなりました。一国の国家予算ほどの資金が一秒で世界中を飛び回る時代なのです。
つまり、ブロックを作って資金の流出を食い止めることは国家経済を考える上で重要な要素なのです。そこで鍵になると考えられるのが「ネット検閲」や「ネット主権」になってきます。中露を始めとするユーラシア国は権威主義国家が多いです。これらの国では様々な理由で「検閲」を必要とするので、「ネット検閲の技術」は大歓迎でしょう。
どうやら21世紀の新シルクロードは「ネット検閲ロード」であり「ユーラシアサイバー金融ロード」にもなりそうです。
参考VTR
アルゴリズムはどのように世界を変えたか?というTEDトークです。ここではサイバー空間創造にも現実空間の工事が必要なのです。
CCTV制作の一帯一路に関する番組で「金融」をテーマにしています。
点から線。そして面へ 中国ゴーストタウンの正体
中国経済の失速
中国経済が高度経済成長期を終えた事はすでに様々なメディアで言われています。それと同時に、中国のゴーストタウンの存在も報道されています。
中国国内でもゴーストタウンランキングが発表されたり、その関心度は中国国内でも高いです。
これらを見ていてある事に気づかないでしょうか。それは、このランクインしているゴーストタウンがある省が内モンゴルや新疆、黒竜江、海南省、雲南、寧夏といった中国の辺境地帯に偏っている傾向です。さらに、内陸の省に偏っている事も見れます。甘粛省や河南省、安徽省などは内陸省であると同時に中国の貧困地帯でもあります。これだけではまだ中国のゴーストタウンの正体は分かりません。ここに”ある”計画とその計画の地図を見ると、見えてくるものがあります。
経済ベルト建設計画
習近平体制は農村と都市の格差是正と小康社会(ゆとりある社会)を掲げています。それに伴う動きが様々な所に見て取れます。その目玉政策の一つが経済ベルト建設計画です。
http://www.hkcd.com/content_p/2015-06/04/content_23309.html
このように、中国国内ではさまざまな場所をつなぐ経済ベルト建設が実際に行われたりしています。都市を拡大させ農村を取り込み農村を都市として扱えるようにしたり、別々の都市を交通インフラで結んだりしながら、点の開発から面の開発へ移っています。もちろんここにも新シルクロードや汎アジア鉄道計画なども加わります。
さて、これらの経済ベルトや経済区の内容を細かく見ていきましょう。
http://blog.sina.com.cn/s/blog_51bfd7ca0101e92r.html
上の地図は中国が現在進めている各種経済ベルト計画です。この経済ベルトとゴーストタウンランキングの傾向をよく見ると、ゴーストタウンランキング50に入っている町や省がこれらの経済ベルト沿いに点在しているのが分かると思います。僕には中国のゴーストタウンというのは経済ベルト建設のための布石になっているのではないかと思えてなりません。
しかし、ゴーストタウンランキングにも入っていて、この中国国内の経済ベルト建設から漏れた地域もあります。しかし、忘れてはいけないのが、中国には新シルクロード計画や中国からパキスタンのグワダルに至る経済回廊計画や汎アジア大陸鉄道建設も行っています。
現地に住まわれている方で、ゴーストタウンが交通網の整備と人口の移動で復活した所を経験した方もいるようです。
以下は経済ベルト建設に関する台湾メディアの報道です。
新疆のホルゴス自由貿易区や雲南省から東南アジアに抜ける経済ルートについて。
トランプの裏で・・・
トランプショックの裏で
世界がトランプショックに襲われてますが、別に世界はアメリカとしか外交しているわけではありません。トランプショックの裏でも色々とアジア・ユーラシア情勢は動いています。本稿ではトランプ・ショックの裏で起きているニュースについて纏めます。
中国の国際関係
李克強首相が8日から9日にかけてロシアを訪問しメドベージェフ首相とプーチン大統領と会談しました。両国の友好関係は地域のみならず全世界的な利益になると確認されました。文化、人的交流の促進やインフラ整備の協力、金融やエネルギーの協力。また上海協力開発機構の更なる強化などについて言及されたようです。
李克強総理訪ロで交渉進展見通し 中ロ天然ガスパイプライン西ルート建設
中国・パキスタン関係には大きな進展がありました。13日にパキスタンのグワダル港が正式開業され、中国の商船が着岸しました。その後、陸路を通って新疆まで運ばれます。パキスタンは中東、中央アジア、インドや中国に囲まれたように存在しています。グワダルが本格稼働し、パキスタン国内から中国新疆までいたる経済回廊建設が上手くいけば、地域秩序に大きな影響を与えることが考えられます。
中国・パキスタン経済回廊については以下参照。
「アメリカ後世界」への備え
ほかにもEU離脱を決めたイギリスのメイ首相が6日から二日間、インドを訪問しました。インドの経済成長を自国経済のエンジンに組み込むための話をしたようです。英印の二か国間自由貿易協定の計画もあるようです。
どうやら各国とも「トランプのアメリカ」「アメリカの栄光なる孤立」に備えているのだと考えられます。
外国人とコミュニケーションするコツ
外国籍児童の指導や外国人の生活支援をするような方は参考にしてみて下さい。
むろん、その外国の言葉が出来れば問題ないですが
皆が皆そういうわけにもいかないので、「外国人にとって分かりやすい日本語」を話すように心かけましょう。
①短い文章で話しましょう。
日本語の「~て、~て」ででつなげる話し方は止めて下さい。
外交モンスターベトナムの実力。
環太平洋国家のダークホース、ベトナム
フィリピンの大統領のドゥテルテ氏が中国に訪問し南シナ海におけるパワーゲームが新しい局面を迎えそうです。そんな中、こんなニュースが飛び込んで来ました。
ベトナムも南シナ海で中国の圧力を受けている国です。南シナ海で中国公船に嫌がらせを受け大規模な反中デモも発生しました。ここで、中越関係とベトナムの外交力の上手さについて纏めてみます。
もともと北ベトナム地域は後漢王朝への反乱以来、中国への約900年にわたる抵抗の末に国家を成立させた歴史を持ちます。チュン(徴)姉妹の反乱は世界史にも出てきましたね。その後も宋・元・明・清の歴代王朝の圧力から1979年の中越戦争に至るまで、中華王朝から圧力を受け続けてきました。なので、ベトナムは基本的に反中感情が日本と同様に高く、2015年のピューリサーチの調査では対中好感度は19%で、太平洋国家ではワースト2位でした。
外交力モンスターベトナム
ベトナムも社会主義国家で、一応政治的には中国の親戚です。しかし、上記に記した通り、現実問題では中国の圧力から如何に身を守るかもベトナムの大きな課題です。もちろん、中国との貿易もベトナム経済に貢献しているので、反中一辺倒でも親中一辺倒でもない脅威の外交テクニックを発揮します。
ベトナムは2010年、カムラン湾に、ロシアの支援を受けて、潜水艦、空母を含め、あらゆる国の海軍艦艇にサービスを提供する総合港の建設計画を発表しています。また翌年にはロシアからキロ級潜水艦6隻を購入し、すでに3隻が配備されています。カムラン湾の北、ニャチャンの軍港にはインド軍艦の駐留も要請しました。そして2015年、オバマ大統領の訪越でアメリカからベトナムへの武器輸出を完全解禁されました。
2014年の反中デモの直後もグエン・フー・チョン書記長の特使としてレ・ホ・アイン党書記局常務が訪中します。ベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長も2015年に親善のために訪中します。帰国後はロシアと自由貿易協定を締結。その翌日にアメリカ軍艦が寄港し、米越の軍事関係強化を表明します。わずか数日で中露越それぞれとの関係を切り盛りします。ベトナムはTPPにも参加しAIIBにも参加しています。
中華帝国から経済的利益を享受し、米帝国と露帝国からは軍事と経済利益を引き出す。まさに脅威の外交テクニックと言えます。
中越関係に突然のきな臭さ、関係悪化を招いた3つの伏線と2つの地雷(いまじゅん) : 中国・新興国・海外ニュース&コラム | KINBRICKS NOW(キンブリックス・ナウ)
庄司智孝
ベトナムのポテンシャル
ベトナムは86年以降、市場開放政策をとり様々な改革を断行していきます。1989年には農業の生産性を向上させ、世界第三位の米輸出国になります。2000年代は平均で7,25%の経済成長を記録します。一人当たりの国内所得も2000年の402ドルから2010年には1174ドルに上昇しました。また、少子高齢化の問題もベトナムはまだしばらくは無縁と言われTPPでは独り勝ちも予測されています。
現在、ドゥテルテの言動に混乱させられていますが、ベトナムも油断できないです。
引用・参考文献
安田峰俊 アジア発中国本音の評判「シナ人を叩き出せ」 P190
P73 対談 日本人が”中国の論理”を読み解けない理由
岡本隆司氏と富阪聰氏の対談より
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P191 P194
「多様性」を抱える事は面倒くさい。だけど「多様性」を抱え込むと最強だ。
「多様性」は面倒くさい
昨今、「多様性」をめぐる議論が色々とされていますね。僕も「多文化共生」を作るような場に色々と立ち会っています。具体的には在日外国籍児童の学習支援などを通じて社会の多様性に貢献するというモノです。
そういう場で感じるのが「多様性というのは悉く面倒くさい」という事です。
どういう事かと言いますと、その国や来日している家族の階層によって、
身に着けている学力がはなはだしく異なり一律の対応が出来ないのです。
もちろん身に着けている日本語のレベルも違います。
例えば、日本だと小学校から中学校までは基本的に落第はありません。それに義務教育なので、日本国内で暮らしている限りどんな人でも15歳以上の人は中学校までの学力が備わっています。しかし、国や過程によっては、母国で小中学校を満足に履修せずに日本でいきなり日本の高校過程を履修する事になる事もあり得ます。落第を小中で経験したりした場合、18歳や17歳で高校一年生という事もあり得ます。様々な国籍の児童が集う多様性のある学校や教室というのは非常に面倒くさいのです。
なぜ「多様性」を抱え込むのか
そんな面倒くさい「多様性」をなぜ社会は抱え込もうとするのでしょうか。それは多様性を抱え込んだ社会は、
柔軟性が生まれ前代未聞の事態にも対応がしやすく生存率が高まるからです。
生物で考えてみましょう。単細胞で遺伝子をコピーして増殖する生物は、ものすごく効率的に個体を増やせます。しかし、最大の弱点は何かウィルス性の病気が流行った時に一発で全滅する可能性もかなり高いです。他には極端な例ですが、日本で米食しか許さない法律が出来たとします(つまり食文化の多様性が無い状態と考えて下さい)しかし、何かの拍子で米に罹る病気が流行り米が全滅したら同時に日本人の主食は消えます。食文化の多様性があれば、米が絶滅するような事があっても麺を食べたりナンを食べる事が出来ます。
「多様性を抱え込む事」は社会や組織が生き延びる確率を上げる合理的な選択なのです。多様性社会建設のためにコストを払うのはこのためです。